ひわの葉薬(トップ) > 夜宵さまと僕 > 211〜220


 

211

「雅巳さん、今度お子さんが産まれるって聞いたんですが!」

「ああ、そうだ。夜宵さんには伝えておいたんだが」

「なんで僕に言ってくれないんですか!」

「だってなんかお前、ヴェートーヴェンの交響曲第五番ハ短調67いわゆる『運命』みたいな顔しそうだから」

「どんな顔ですか! ちょっと、どうしたらいいのかわからなかったんですけど、気持ちとしておもちゃを買ってみたので、どうぞ。包みも開けてください」

「おお。ありがとう。どれどれ……む、これは、知育玩具としてはベタベタな 言った言葉が自動的に録音・再生されるぬいぐるみだな」

「おしゃべりぬいぐるみですね。これなら三歳くらいまで使えるかなと……雅巳さん、何か話しかけてみますか?」

「Remember Pearl harbor.」

「雅己さんは、お子さんにどう育ってほしいんですか?」

 

212

「ねえ豚、『ドジっ子スピリチュアル探偵・どってん解明』というのはいかがですか」

「まず主人公が 今の子供たちに通じないと思います」

 

213

「死とは誰にでも訪れるものですよね、豚」

「えっ……な、何かあったのですか夜宵さま」

「先日 ヨーロッパ巡りをした時に森林浴をして思ったのですが」

「はい」

「切り株って、生きてるんでしょうかね?」

「ああ……そういえば 身近な生と死の狭間ですね……」

 

214

「つくづく思うのだけど、あなたって本当にお金の管理が出来ない豚ね」

「や そ その点についてはいくらでも罵倒していただいて結構なのですが、仕方ないんです男塾外伝五冊と『血まみれスケバンチェーンソー』十二巻は買わざるを得な」

「一人前に何を弁解しているのでしょうこの豚が」

「……うう……ハイキック一閃してからおっしゃるのは不公平です 夜宵さま……」

 

215

「夜宵さま、おかえりなさいませ。そろそろ捜索届を出そうと思っておりました」

「私は私の行きたい時に旅に出るのですよ」

「せめて出発の日くらいお教え願えませんか……」

「お断りです。 で、今回はニュージーランドに行ってきましたよ。はい 心優しき私からのお土産のマーマイト」

「嫌な予感しかしないのですがありがたくお受けします。夜宵さまは今回のニュージーランドで、どのようなご観光をなされたんですか?」

「前々から気になっていたフクロウオウムを見てきました。絶滅危惧種で、脂肪がぷにぷにで ペンギンでもないのに飛べなくて 図体は大きいのに元々天敵がいない環境で育ったせいで人間の持ち込んだ天敵に出くわすと逃げることも出来ずにうずくまってしまうのです。可愛いのです」

「うわあ なんだか親近感が……」

「あら あなたは別に絶滅危惧種ではないでしょう。絶滅してもまあドンマイドンマイくらいの立ち位置でしょう」

「プリーズマインドミー」

 

216

「最近、吉村昭『破船』を読了したのですがね」

「ああ、あの三毛別羆事件の小説を書いた人の」

「あなたの頭にはおぞましい事件の知識しかないのですか 豚が」

「す すみません。それで、その本が夜宵さまの琴線に触れたのですか」

「触れるというか、もうあれですね 16ビートですね」

「何で叩いてるんですか 琴線を。そんなに面白かったのですか」

「ええ。ネタバレは八割方伏せますが、貧しい村で生きるショタの話です」

「八割方予想通りです」

 

217

「ああ……もうすぐ運動会シーズンも終わってしまうのですね……毎年のことながら、時の経つのは早いものですね……」

「近隣の小学校で保護者らから 何故か毎年どこの運動会にもいる謎の美女として都市伝説になる日々も、間もなく終わりですね」

「まあ私の美しさは都市伝説レベルですからね」

「その美女が、バズーカのようなでかいカメラで美少年に照準を合わせ撮影しまくらなければ きっともっと幻想的な伝説になっていると思います」

「なあに 私が健康的な児童の躍動感を撮影するのはそんなに罪悪?」

「……夜宵さまは その美貌でだいぶ割り引かれていますよね」

「そうね。顔がザ・ブングルのエラの方でしたら、きっともっと目立つでしょうね」

「本当に もう逮捕されそうなことはよしてください夜宵さま……」

 

218

「この夏はあまり夏らしくない雨模様でしたね、夜宵さま」

「そうですね。何だか季節が旧暦に近付いて来ている気がします」

「そして祝祭日が増えるのでしょうか」

「増えたらちびっ子たちが外に出てくるので、私としては油断ならない季節が増えそうですね」

「夜宵さま よだれを拭きましょう」

 

219

「ここ数年、エロスのジャンルに『おねショタ』という きれいなおねえさんがショタボーイに十八歳未満禁止行為をおこなうものが流行しているようですが どう思いますか豚」

「……どう思うというか、この十三年ほど すげえ間近で そういった法律の越境すれすれ場面を見て参りましたので、特に思うところはないです」

「それでもオスですかこの豚が。そういう時こそ、実在の美女と美少年を引き合いに出して掛け合わせるものでしょうが」

「掛け合わせるという言葉の意味がわかりません。あと、オスでも興味のないエロスジャンルはあると思います……」

「ほう。ではあなた、おねショタに興味がないと」

「ありませ ヒッ! ななな何ですか 突然後ろから抱き付かないでください!」

「あなたがハンドスピナーやベイブレードをキャッキャと遊ぶ世代に、この美しい私と出会ったと考えたらどうです あなたの顔面偏差値は横に置いておいて」

「確かに僕は美少年でなかったですが……何というか、夜宵さまはその美貌でまず相手の思考回路を遮断してから誘惑に入るでしょう。僕の意志も関係なく」

「あなたはその誘惑に抗しきれますかね フフン」

「……なんかこの後 肉体を若返らせるという乱歩ドイル少年探偵的展開が思い浮かんだんですが」

「あら、豚のくせに今日は冴えてるのですね。私、どうせならショタっ子にご奉仕されたいのにあらそうだこうすればいいのですよ的なひらめきをですね」

「え、いや何で どっから現れたんですかその屈強な取り巻きは やめっ ちょっ ほんとやめて えええ ええええええっ!」

220

「豚、弾丸一発で人を殺すとしたら 見せしめ・確実性・コメディ それそれ重視した箇所をひとつずつ答えなさい」

「なんなのですかその質問は。そうだなあ 眉間・心臓・股間 でしょうか」

「その全てを一度にかばえてしまえるのが 故・赤塚不二夫氏の考案したポーズ『しぇー』なのですよ!」

「な、なんだってー」

 


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