ひわの葉薬(トップ) > 夜宵さまと僕 > 181〜190


 

181

「ねえ。あなたを呼ぶのに、犬と豚 どちらがふさわしいかしら」

「どちらかといえば犬と呼ばれたいです」

「では、豚と呼びます」

 

 ……いや、わかってはいたけれど。

 

182

「ねえ、あなたって横顔が橋田壽賀子に似ているのね」

「その前向きにとらえようがない表現はなんなのですか」

「あれです、『しかし幸せは長くは続かなかった……』ってやつです」

「幸薄そうということですか夜宵さま」

 

183

「ねえ豚、懲役20年と死刑10年 どちらがいいかしら」

「死刑10年……!?」

 

184

「ねえ豚、濱田龍臣君の愛らしさに比べたら あなたの命なんて塵芥の如しと思いませんか」

「どういった比較基準なのかわかりませんが、とりあえず命だけはお助けください」

「それにしても愛くるしいですよねえ、濱田龍臣君。あの可愛らしさは反則的です。まさにゆるふわカールに恋ハセヨです」

「夜宵さまは少女時代もお好きなんですか」

 

185

 本日、夜宵さまと共に近くのレストランで食事をさせて頂いたのですが、「豚には豚がお似合いですよ」とイベリコ豚丼を強制的に注文させられました。

 なんだろう この背徳感は。

 

186

『豚へ。おやつは冷蔵庫の三段目にあります』

 

 冷蔵庫三段目の野菜室に 何故か鎮座するサルミアッキ一袋。

 

187

「ねえ豚」

「はい」

「『豚』と呼ばれて素直に返事が出来ても、何もいいことはないのですよ」

「じゃあ呼ばないでくださいよ」

 

188

「あら、豚。異様に顔色が悪いですけど、どうかしたのかしら。道端に落ちていたたこ焼きでも食べたのかしら」

「僕はどれだけ可哀想な食生活を送っているのですか。そうではなくて……ちょっと、彼女と別れまして……」

「そう……どちらの養豚場のメス豚?」

「人間ですよ!」

「よしよし。まあ少し落ち着きなさい。そもそも、豚の分際で人並みの幸せを手に入れようとするからいけないのですよ。わかりましたか? ねえ豚」

「頭を撫でながら絶望的な台詞をおっしゃらないでください」

「ちなみに、どうして別れたのですか」

「……や、ちょっと……その……彼女が他の男とディープなキッスを致している最中に出くわしまして……」

「ちゃんとブン殴ってやりましたか」

「……いえ、殴りはしてないですが……」

「そういう時こそ拳に物を言わせないでどうするのですか。そんなことだから周囲にナメられるのですよ」

「僕は黙ってても普段からナメられまくってます」

「そこは開き直る所ではないですよ」

 

189

「もしもし」

「もしもし。俺だ」

「お久しぶりです雅巳さん。切っていいですか」

「駄目に決まってるだろう。最近調子はどうだ。相変わらず職場ではセクハラされてるのか」

「毎日がセクハラ&パワハラのワンツーコンボですが」

「そんな過酷な生活を送っているお前にいいものをやろう。本場アムステルダムでひょんなことから入手した幻の」

「人生が楽しくなるクスリとかは嫌ですよ」

「チッ。しかし、こんなのお前のご主人様ならいくらでも持ってるんじゃないのか」

「あり得そうな怖いことを言わないでください。……そういえば雅巳さんこそ、最近どうなんですか。奥さんとはうまくいってるんですか」

「………」

「………」

「……ちょっと、人生が楽しくなるクスリ飲んでくる」

「やめろ」

 

190

「ねえ豚。あなたが人生の中で一度は言ってみたい台詞って、どんな言葉ですか?」

「ブチ殺すぞ……ゴミめら……! です」

「そして熱した鉄板の上で土下座する訳ですね」

「その末路は含めないでください」

 


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