TOUBYOUCHU (08/10/16?〜)


 

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夜宵さまと僕

 

「最近、吉村昭『破船』を読了したのですがね」

「ああ、あの三毛別羆事件の小説を書いた人の」

「あなたの頭にはおぞましい事件の知識しかないのですか 豚が」

「す すみません。それで、その本が夜宵さまの琴線に触れたのですか」

「触れるというか、もうあれですね 16ビートですね」

「何で叩いてるんですか 琴線を。そんなに面白かったのですか」

「ええ。ネタバレは八割方伏せますが、貧しい村で生きるショタの話です」

「八割方予想通りです」

 


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 研究職に就いている妻は、夜遅くに帰って来ることも珍しくありません。

 たいてい僕が妻のごはんを用意して 僕自身は軽食で済ませ 妻の帰宅のタイミングに合わせて食事を共にするのですが、今日はいやに遅い。どうしたかなあ メールにも返事がないし そろそろ電話するかなあ そう思っていたら、妻が帰宅。

 

「ただいま。ごめんなさい、すごく遅れちゃった。まったくとんだ厄介事を押し付けられたもんよ」

「おかえりなさい。職場の揉め事かい まあまあ 僕お手製のチキンドリアでも食べて落ち着きなよ。ラップしてあるから そのまま温めればいいよ」

「ありがとう。……はっ! そうだ、ラップよ! ラップだ!」

「なんだい 芥川龍之介『河童』みたいなものかい」

「ああ、クチバシの溶けたあの……ってそうじゃないよ 穴にラップすればもう大丈夫ってことよ」

「君の言っていることが ひとかけらもわからないんだけども」

「んーとね。私の勤めている会社 実はとんでもないモノを抱えていてね。普段は堅く封じられているんだけど、会社の昇進試験を通った何人かのうち一人 そのとんでもないモノを一年間何とかしなくちゃいけなくてね」

「とんでもないモノ? 違法薬物とか、はたまた違法な研究とか、ワシントン条約を無視した実験とか かな」

「どれでもないよ。とりあえずそのモノは置いといて 時間の概念からいこうか。時間ってのはどんなものだと思う?」

「話が飛躍しすぎてないかな。ええと 時間とは移り変わりであり 物事や事物の変遷であり 変化という現象のこと だろうか。上手く言えないけども」

「上手く言えないのは時間というものが多面性を帯びていて、皆それに目を奪われがちだからよ。可及的平易に考えてみましょうか。時間は連なりである、というのが今言ってたあんたの主張ね。しかし連なりであるなら すぐそばに過去があることになるから 触れ得てしまう。壁として考えるとわかりやすいかな 薄い壁の連なりの最先端にあなたがいるとしたら後ろもしくは横に手を伸ばせば触れ得てしまうでしょう」

「よくわかるような わからないような。じゃあ 連なりでないとしたら なんなのだよ」

「時間というのは連なりでなく 積み重ね なのだよ。前後左右を連なりと考えるなら、上下が積み重ねに当たる。どんどん積み重なっていく時間は あなたを最先端の『過去』